散切り頭を叩いてみれば

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山と旅行の見聞録

散切り頭を叩いてみれば

草葉も落ちて12月 銅山越えて東赤石山

f:id:yugataquintet:20210704154513j:plain2020年12月上旬、四国にある法皇山脈の主峰、東赤石山に登ってきた。

法皇山脈石鎚山脈の支脈で、瀬戸内海から切り立ったように鎮座しているのが特徴。

その最高峰となる東赤石山は標高1,706m。

海が見下ろせる高度感は日本アルプスのそれと遜色なく、瀬戸内海を見渡す素晴らしい景色が堪能できる。

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引用:Google Earth

2020年12月上旬。

 

土曜日昼過ぎに現地へ到着する予定のため、1日で降りてくるのは不可能。

初日は銅山峰ヒュッテで1泊する1泊2日の行程とした。

 

ただ、行き帰りで同じ道を歩くのは嫌なので、日浦登山口から翌日に東赤石山へ登り、筏津登山口へ下山するコースでいく。

 

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予定どおり昼過ぎに筏津の駐車場へ到着。

 

宿泊予定の銅山峰ヒュッテは日浦登山口からほど近いが、あらかじめ日浦登山口の駐車場にとめてしまうと、下山後に1時間も車道を歩いて車を回収する羽目になる。

行きと帰りどちらに車道を使うのが嫌かといえば、それは帰りの方が辛い。

 

日浦ではなく筏津に駐車したのはそんな理由から。

 

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という訳で、ここ筏津の駐車場から日浦登山口へは約1時間の車道歩き。

標高は日浦の方が高いので、車道は常に登り局面。

 

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途中には、別子郵便局や四国中央警察の駐在所も通る。

 

このあたりまで結構山間部の道を車で抜けてきたが、四国によくある山間部の国道のような樹林が覆い被さるような道ではなく、こんな感じで開けているから快適だ。

 

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筏津の駐車場からぴったり1時間で、日浦登山口駐車場が見えてきた。

車の通りも少なく道幅も広いから安全な道ではあったが、如何せんつまらなくはある。

 

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駐車場の右奥にはトイレ、その正面からが登山口。

駐車場利用者の中には、別子銅山の史跡を見る観光客も含まれているはず。

 

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明治の富国強兵の時代、別子銅山人力だった採鉱過程に火薬・ダイナマイトを導入。

蒸気機関や鉄道も整備され、わずか10数年の間に急速な近代化が成し遂げられた。

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入山して間も無くすると、帝国主義時代の遺構が登山道脇に現れてくる。

いつもの登山では序盤は樹林帯。

早々からめて楽しめる分、しんどさは全く感じない。

 

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ここは住友林業の私有地。

同社が登山者、観光客用に産業遺産の説明看板なども整備していて、隅々読んでいると日が暮れてしまいそう。

 

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登山口から遺産を脇目に眺めつつ40分で休憩所に到着。

案の定12月はトイレ使用休止期間で使えない。

薄々そんな気はしていた。

 

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トイレから100歩弱で水場に到着。

ダイヤモンド水と名付けられていて、水量も申し分なかった。

 

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水場を過ぎると遺跡は無くなる者の、それでも道の整備は引き続き良くて歩きやすい。

傾斜も程々に緩く、息が上がるような急坂ではないのも良い点。

 

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登山口から約1時間20分、筏津の駐車場から2時間20分で銅山越に到着。

ここから東赤石山へ行く場合は稜線伝いに東へ向かうが、今日は1泊するから峠を越えて銅山峰ヒュッテへ下りる。

 

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銅山越は見晴らしに乏しいものの、少し稜線を歩けば展望が効く場所も。

天気予報に反して、今日は低い雲が多め。

 

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銅山越からヒュッテまでは下りで20分弱。

標高を200m程落とす事になる。

 

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午後3時半、銅山峰ヒュッテに到着。

 

注意しなければならないのが、ここは俗にいう一般的な山小屋ではない。

 

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 普通に生活されている方がいるようで、予約があった場合にのみ対応できるとのこと。

一般的な営業小屋のように、通りがかったからとノックするのはご法度なので、くれぐれも事前に最新情報の確認を。

 

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夜になると、新居浜の街灯りが煌々と光っている。

その奥の暗闇は海。ここから瀬戸内海はすぐそこだ。

 

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それでも星を見るには十分な暗さ。

喧騒から離れつつ、街明かりを見て安心できる贅沢な立地。

 

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翌朝。

 

予報では今日も快晴のわりに、薄雲がかかっていた。

 

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昨日別れた地点、銅山越までは200mの上り。

準備運動だと思って黙々と登る。

 

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銅山越まで戻ってきた。

 

端に置かれた標識によると、西赤石山経由で東赤石山は4時間。

まさにこのルートで問題ない。

 

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銅山越の分岐からすぐに展望は開けるものの、やはり変わらず曇り空。

ウェザーニュースでは新居浜市は全日晴れマークだけのはずなのに、いつ現実に反映されるのやら。

 

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途中、東山という小ピークを越えてまずは西赤石山を目指す。

道は穏やか。季節柄、草木は全く元気がない。

 

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緑が生い茂る季節にくれば、もう少し展望も限られているのだろうか。

真冬の今は、頭上がスカスカで展望が良いが視覚的には寒く寂しい。

 

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銅山越から1時間、まずは標高1,626mの西赤石山へ到着。

 

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振り返れば、歩いてきた稜線に、銅山越近くの電波塔が見えている。

中央奥に大きく見えるのは、日本二百名山笹ヶ峰

その奥、肩の部分に見えるのが、おそらく石鎚山周辺の山々。

 

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西赤石山の山頂は、背丈の半分ほどの木が生えているため、抜群の展望とは言えない。

陽も差さず止まると寒いので、休憩も程々にして先に向かう。

 

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西赤石山を過ぎると、目指す稜線の先にある法皇山脈のゴツゴツした岩峰が目に入ってくる。

 

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空も当初の予報どおり、徐々に晴れ渡ってきている様子。

 

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まず向かうは、真ん中にあるピーク、物住頭。

1,635mで、西赤石山よりも少しだけ高い。

 

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物住頭、読み方はヤマレコによると、ものずみのあたま。

岩山ではなく、こんもりとした丘の様。

 

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山頂は、味気なし。

さっさと次、次。

 

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道路脇には雪も少し積もっている。

目の前の岩峰は前赤石山。

 

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基部に到着すると、一層岩の迫力が増す。

そもそも前赤石山は巻き道が用意されているため必ずしも登る必要はないが、ここは折角だから登ってみるか。

 

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と挑戦したは良いものの、これが今までの全く違い、難易度は格段に上がった。

所々目印はあるもの、中々わかりづらい道を、岩をつかんでよじ登っていく。

 

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足場も広くないことが多く、不安定。

四国にこんなアルプスのような岩場があると思わなかった。

と同時に、素直に巻き道を使えば良かったと軽く後悔する。

 

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次来たときは、絶対素通りしよう。

登り辛くて道を間違えたかと思い辺りを見渡すと、ちゃんと赤ペンキがあって逆に悲しくなる。

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そんなこんなでやっとの思いで着いた前赤石山の山頂。

ちゃんと立派な看板が設置されていた。

 

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眼下には青く広がる瀬戸内海。

まるで、海から直接山脈がそびえ立っているよう。

 

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前赤石山を下ると、巻き道の途中に合流する。

物住頭から、1m時間以上もかかってしまった。

 

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少し進むと見えた、最高峰で日本二百名山東赤石山

一番右の、イガグリ頭のような風貌がそれだ。

 

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直下には、橙色の屋根が東京的な赤石山荘。

2019年に閉鎖され、今は建物だけが残されている。

 

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四苦八苦した前赤石山を抜けても、次に目指す八巻山もこれまた岩稜。

難易度は劣るものの、岩場歩きは続く続く。

 

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日当たりの悪い場所は雪も残る。

12月の四国の山々は、装備選びが難しい。

スパイク付きの靴でない場合はより慎重に。

 

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1,698mの八巻山に到着。

後に残るピークは、主峰の東赤石山のみとなった。

 

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これから進む東赤石山までは、八巻山の山頂から30分。

分かりやすく一回下り、見た景色のとおり登り返せば到着するはず。

 

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八巻山から来た道を振り返る。

やはり前赤石山から此処までの岩の主張が凄い。

 

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八巻山からは、ピンクテープを頼りに一度基部まで下る。

 

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ここが基部。いわゆる東赤石山への取り付き地点。

此処からはものの10分で山頂まで着くとのこと。

 

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なるほど大して特徴のない、ソフトな岩場を登る。

 

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本当に看板のとおり、基部から10分で東赤石山に到着。

いつの間にか、瀬戸内海方面の雲海が凄いことになっている。

 

時刻は午後2時過ぎ。

こんな時間に大雲海とは、あまり過去に経験がない。

 

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大座礼山方面から続く石鎚山脈方面。

こちらは雲の少ない冬晴れ。

 

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 山頂はさほど広くないが、こんな季節こんな時間に誰か来るはずもなく独占中。

昨日今日合わせても、数人としかすれ違っていない静かな山行。

 

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少しの長居の後、ようやく下山。

基部まで戻り、そこから次は赤石山荘方面へ。

 

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赤石山荘を経由しても結局は同じところに出てくるが、若干遠回りになる。

ここは筏津へ最短距離で目指す。

 

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上りの日浦と違い、下山に使った筏津のルートは遺産も何もない。

昨日との落差で味気なさが際立つ。面白くないので黙々と標高を下げる。

 

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変化がないかと言えば、所々沢沿いや橋を渡る箇所も出現する。

渡渉というほどのものはないので、まず安心な道ではある。 

 

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最後の最後は沢沿いからも離れて平凡な林道歩き。

 

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ああ、昨日1時間歩いたあの車道が見えた。

ついに車の回収地点、筏津へ下山完了。

 

車を回収し、無事に今日も帰路についた。
 

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 東赤石山

日本二百名山の割に知名度が低く、12月という時期もあってか人の気配のほとんどない登山だった。

 

西日本の山にしては珍しいアルプスの様な岩峰は、中央構造線が四国まで続いているのが納得できるような風貌で異彩を放っている。

 

花の百名山でもあり春は沢山の登山客で賑わう様なので、次は花の時期に旅してみたい。