散切り頭を叩いてみれば

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山と旅行の見聞録

散切り頭を叩いてみれば

混雑と喧騒を避けて 桂木場から初冬の木曽駒ヶ岳へ

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2020年11月初旬、中央アルプス木曽駒ヶ岳に登った。

中央アルプスの王道といえば、駒ヶ岳ロープウェイを使った千畳敷からのルート。

ただ、過去このルートは人が多いのが容易に想定され、どうにも気が向かない。

そこで今回はロープウェイを使わず駐車場からすぐ登れる、桂木場登山口から入山した。

 

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土曜日の朝、登山口前の駐車場へ。

 

この辺りはどの場所も若干傾斜がかかっており、車中泊にはあまり適していない。

 

という訳で、夜が明けるまでは駒ヶ岳SAで時間を潰し、午前7時頃にここへ到着した。

 

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地理院地図Globe(加工済)


桂木場登山口は木曽駒ヶ岳に直接登るルートではく、稜線に登ってから将棋頭山の山頂を若干巻いていく。

 

登山口の標高は1,280m。2,612mの千畳敷ルートの半分以下の標高しかない。

 

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午前7時、登山開始。

 

林道駐車場の向かいに登山口。

 

西駒登山ルート、もしくは桂木場ルートと名付けられている。

 

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ここ桂木場ルートは、ロープウェイを使わず、麓から自分の足で上がる行程となる。

 

近所の学校の学校登山としても使用されるらしく、傾斜も基本的に一定で特に悪路はなかった。

 

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出発してすぐ、ぶどうの泉と名付けられた水場があった。

 

この時期でも水は枯れておらず、ある程度の水量は確保されている様子。

 

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道は低い笹に覆われているが、刈り払いはしっかりと行われていて、藪漕ぎ場面は皆無。

 

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前週に行った南アルプスと同様、中央アルプスも11月初旬となれば紅葉も終わりかけ。

 

登山口付近の標高1,300mあたりが黄色く色づいていて、とても綺麗だった。

 

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地理院地図Globe(加工済)

 

登山開始から約2時間で、大樽避難小屋に到着。

 

 

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ここまでは比較的緩やかな行程。

 

汗ばむこともなく登ってくることができた。

 

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トイレは使用可能だったが、汲み取り式ではなく簡易トイレ方式。

 

小屋内に簡易トイレの袋が備え付けられているので、お金を入れてから拝借してトイレに使用する。

 

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床は痛んでいて綺麗な避難小屋には遠く及ばないが、特に問題なく使用できそうだった。

 

小屋としてはこじんまりした大きさで、一度に使用できるのは数人が限界か。

 

立地としては林の中で、眺望はあまり期待できないところ。

 

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大樽避難小屋を過ぎると、胸突八丁と呼ばれる所に入っていく。

 

他の場所でもよく使われる名前。胸を突くような急坂が続くのだろう。 

 

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九十九折に道が作られており、そこまで坂自体も長くない。

 

思い出す限りでは北アルプス常念岳でも同様の名前がつけられた地点があるが、此処の方が傾斜は緩い気がする。

 

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気温はそこまで低くはないが、6号目の標識を過ぎたあたりから、登山道脇に少し雪が見え始める。

 

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胸突八丁を抜け、森林限界の気配を感じ始めた頃には、道中一面が雪となった。

 

傾斜はさほどきつくないため、チェーンスパイクは付けずに慎重な足取りで歩く。

 

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そして稜線が見えた。目の前に見えるのは、まず目指す将棋頭山。

 

ここを超えて木曽駒ヶ岳へ向かう。

 

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東へ目を向けると、市街地を挟んで南アルプスの山並み。

 

もう11月。

 

紅葉はすっかり麓まで降りてきた。

 

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分水嶺に到着。

 

ここが日本海と太平洋に流れる水の分岐点。

 

奥に駒ヶ岳の山容が行程中初めて目に入る。

 

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将棋頭山へ最後のトラバース。

 

まずは直下の西駒山荘で荷物を下ろしたい。

 

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陽なたは雪解けでべしょべしょ。

 

一方で日陰は氷でガチガチの意地悪な路面状況。

 

山荘まであと少しだというのに、チェーンスパイクをつける羽目になってしまった。

 

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遂に見えた、ここが西駒山荘。

 

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地理院地図Globe(加工済)

 

登山口から約4時間半。

 

過ごしやすい気温のためか、疲れもまださほど感じない。

 

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休業中の西駒山荘も、現在は冬季避難小屋の時期。

 

開放された石室で大方の荷物を下ろし、木曽駒ヶ岳へ向かう道中の肩負担を減らす。

 

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木曽駒ヶ岳に向かう前に、山荘の裏山的存在の将棋頭山の頂上を先に踏んでおく。

 

特に立ち寄る必要はないが、ものの数分で到着。

 

日暮れ夕暮れも手軽に見やすく、立地は素晴らしい。

 

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午後1時半、将棋頭山を出発。

 

山の上では猛暑等の季節。

 

日も短いので、なるべく急いで木曽駒ヶ岳へ。

 

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稜線伝いに木曽駒ヶ岳山頂まで、平均コースタイムで2時間弱。

 

今回は1泊予定なので午後発でも間に合うが、秋以降で日帰り想定の場合は午前中に西駒山荘を通過したいところ。

 

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将棋頭山頂付近からでも、宝剣岳の鋭い山頂は目立つ。

 

よく見る千畳敷からの角度ではないので、目新しい光景。

 

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今日木曽駒ヶ岳方面からすれ違った人は誰もいないが、既に踏み跡はいくつかある。

 

桂木場から入って千畳敷に降りる人もいるのだろうか。

 

それは楽しい縦走になりそうではあるものの、桂木場に止めた車の回収が難しい。

 

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標高2,800mを超えたあたりでは、既に雪が壁のように積もっていた。

 

わずかに登山道が露出しているから普通に歩けたが、もう少し降り積もっていたら立派なアイゼンでないと突破に苦悩しそうだ。

 

季節の変わり目の装備選択は、いつも難しい。

 

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急登をトレッキングポールとチェーンスパイクで進む。

 

もう西陽が差し込む時間になってきた。

 

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気持ち急いで将棋頭山から1時間半かけて、木曽駒ヶ岳の山頂に到着。

 

将棋頭山から距離は多少あったが、無駄なアップダウンを繰り返すこともなく良好な道のりだった。

 

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時刻は午後3時過ぎ。

 

下山ロープウェイの最終時刻が迫るのか、王道の千畳敷ルートから登ってくる人も、まばらになってきている。

 

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無風で穏やかな山頂。

 

空の色合いも、なんとなく冬が近づく夕方の雰囲気。

 

少し肌寒い。

 

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夏の間は賑わう空木岳への縦走路も、この時期は比較的落ち着いているのだろうか。

 

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夏場では必ずと言っていいほど雲に包まれる午後3時過ぎでも、今日は雲ひとつない晴れ。

 

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とはいえ、うかうかしていると日が暮れてしまうので、山頂も大概にして西駒山荘へ戻らなければ。

 

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登ってきたやや急な坂を下るものの、切れ落ちた場所などはなく、陽が傾き始めてもまだ少しは安心感がある。

 

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念のためヘッドライトは持ち出してきたが、それも出番なく山荘まで戻って来れそう。

 

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時刻は午後4時50分。

 

下りということもあり、木曽駒ヶ岳から1時間強で西駒山荘まで戻ってこられた。

 

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今日はここで一夜を過ごす。

 

駒ヶ根市街からの電波が強い。

 

夜になったとしても、電波が入る環境というだけで、いつも安心できる。

 

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陽が沈んだあと、ゆっくりと空に雲が増え始める。

 

予報によると、夜に一旦雲が立ち込めるも、翌朝は快晴とのこと。

 

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そして翌朝。

 

確かに予報どおり、夜に湧いた雲はどこかに去っていた。

 

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下山前に山荘からそぐそこの将棋頭山へ、昨日に引き続き登頂。

 

相変わらず御嶽山は堂々たる面構え。

 

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恐らく権兵衛峠を経て、経ヶ岳方面。

 

標高が下の方は、オランウータン色の紅葉仕立て。

 

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昨日立ち寄ってきた木曽駒ヶ岳方面は、朝日に遮られてまだ輪郭がぼやけている。

 

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下界の街並みと、南アルプス越しの富士山。

 

将棋頭山の標高2,730mからは、ぎりぎり富士山の頭部分が確認できる。

 

街には若干朝靄がかかっているか。

 

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カメラを望遠を覗くと、北アルプスの山並みもばっちり。

 

ここ中央アルプスと同様、いやそれ以上に着雪していそうな様子。

 

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昨日も今朝も、素晴らしい天気で大満足。

 

まだ午前8時であるが、下山に悔いはなくなった。

 

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上りの最後の核心部は、下りは最初の核心部。

 

まだ陽が昇って間もなく、凍結が緩和されているはずもない。

 

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今日は昨日と比較して、少し雲が解けたような空模様。

 

分水嶺を過ぎると、この展望ともお別れ。

 

あとは樹林帯を無心で下る。

 

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11月初旬の紅葉は、標高1,500m前後。

 

色は稜線から見えた黄金そのもの。

 

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下りは心にゆとりが生まれるからか、周りの景色がよく目に入る。

 

昨日の上りの際は、気がつかなかった。

 

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山荘前から約3時間、午前11時に登山口へ帰着。

 

落葉が緩衝材となって膝に優しく、駆け足で下山できた。

 

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早めに下りてくると、帰路までにどこかへ立ち寄れるのが良い。

 

温泉の後に立ち寄ったソースカツ丼有名店は過去と変わらず大繁盛。

 

行列に巻き込まれて初めてあの人気の木曽駒ヶ岳に行ったのかと実感が湧くほど、桂木場からは僅かな人としかすれ違わなかった。