散切り頭を叩いてみれば

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山と旅行の見聞録

散切り頭を叩いてみれば

休日も静寂の寒峰 12月の剣山系は穏やかな冬晴れ

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2021年12月上旬、四国山地の剣山系にある寒峰に登ってきた。 春のフクジュソウが咲く時期には賑わいを見せる四国百名山も、木々の葉っぱが落ち切った初冬の季節には、土日ですら静まりを見せる。 張り詰めた初冬の寒空の下、誰もいない寒峰の山頂で、人里離れた剣山系の大展望を独占した。

登山ルート

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引用:Google Earth

 

寒峰は、剣山系の中でも北西側の祖谷方面に所在する。

 

落合峠からの縦走ではなく、今回は寒峰単体で登山するので、栗枝渡集落の奥にある住吉神社に車を止める。

 

ここから林道日和茶坂線を横切って登り、寒峰山頂を経て東尾根から降りてくる、時計回りの周回コースを選択した

 

出発

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車で四国へ渡り、国道439号線から下瀬トンネルで国道を分かれて北へ向かい、栗枝渡の集落へ。

 

集落の奥、細い舗装路を10分ほど進むと、住吉神社に到着。詰めて使えば5台程度は駐車可能。

 

脇にある駐車スペースには土曜日の朝だというのに車は一台も止まっていなかった。

 

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駐車場からほんの少し林道を下ると、住吉神社の階段がある。

 

横にある「奥ノ井寒峰花回廊」という緑色の看板が目印。

 

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午前9時。

 

鳥居まで数十段の階段を登り、登山開始。

 

ものの1分で登り切り、お参りを済ませた後、登山道を探す。 

 

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神社の左手に目を向けると小さい看板があり、そこから登山道が始まっていた。

 

初めは斜面をつづら折りに登り、ゆっくり標高を稼ぐ。

 

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見ての通り、標高1,000m近くは珍しい竹林の登山道。

 

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それも束の間、すぐに馴染みのある特徴のない杉林へと変わった。

 

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季節のせいか、入山者が少ないせいか、登山道の起伏が分かりづらい。

 

林業ようの踏み跡に惑わされないよう、山腹を横切るように歩く。

 

地面が案外脆くて、頼りない。

 

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住吉神社の奥から、人の手が入っている感の強い竹林や杉林を30分ほど登ると、コンクリート塀が出てきた。

 

頭上も開けているようで、青空が見える。

 

手すりがつけられているので、塀沿いに上がった。

 

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すると、林道日和茶坂線の上部へ合流した。

 

住吉神社から林道を進めばここまで来れるようではあるが、一見したところ駐車場は見当たらなかった。

 

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林道脇のスペースに上手く駐車できる人の場合は、ここまで車で登ってきた方が多少道のりを短縮できるかもしれない。

 

自分は、駐車した車が邪魔になっていないか心配になってしまう性分なので、それなら歩く方を選ぶ。

 

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林道を横切った向かいに、登山道入口の標識がある。

 

「寒峰登山道入口」と書かれている。

 

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林道を跨ぎ、登山道入口の標識を過ぎた後も、ひたすらトラバース。

 

早く尾根に乗せてくれればいいのに、登山道は斜面をひたすら横切る。

 

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12月頭の剣山系。

 

葉の残る針葉樹が少しあるものの、殆どの広葉樹は葉を落としきり、寒々しい姿になっている。

 

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火の用心ののぼり。

 

登山道に入って初めての人工物。

 

あまり有名でない里山にこそよく見るが、どの団体がどの経費で設置するのだろうか。消防団か?

 

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続いて、こちらもよく見る花の説明看板。

 

福寿草の開花時期は3月から4月と記載がある。

 

全く季節が異なるせいか、果たしてどの辺りが群生地なのかも判別がつかなかった。

 

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林道入口から40分。

 

今までとは見違えるような立派な看板が出現。

 

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地形から察するに、恐らく尾根に乗ったようだ。

 

ここから尾根伝いに約1時間ほど急坂を登り、上げていく。

 

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尾根沿いをほぼ直登。

 

気持ちジグザクに踏み跡がついているかという程度のつづら折り。

 

その分、標高も一気に上がる。

 

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午前10時45分。

 

登ってきた尾根道の終着点。

 

小さい広場のような、特に看板もない三角点に到着。

 

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山と高原地図を確認すると、栗枝渡三角点と記載されている。

 

麓の集落と同じ名前だ。

 

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ここからは稜線沿いの道。

 

稜線上にも木々が茂っており、少し丹沢に雰囲気に似ているかもしれない。

 

関東の山は行ったことないので、真偽の程はわからないが。

 

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ぼーっとしながら稜線伝いに歩いていると、少し歩き辛くなってくる。

 

ふと携帯の地図アプリを見てみると、通常のルートからいつの間にか逸れていた。

 

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ずっと稜線伝いに歩くわけではなく、1518峰は東へ巻くのが正解らしい。

 

外れた道から正規の登山道へ戻るべく少し下る。

 

落ち葉のせいで道が非常に分かりづらい。

 

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稜線から標高を少し落とし、ゆっくり道を巻いて歩く。

 

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10分ほど進むと、湿地状の鞍部に合流。

 

ここで初めて雪が出現。

 

コルであるが故見晴らしは良くないものの、頭上の展望が開けた広い窪地が広がる。

 

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この広場にも、大変に目立つ看板看板がある。

 

流石にこれを見て、行き先は間違えられない。

 

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登山道は、落ち葉が敷き詰められているせいか、全く判別できない。

 

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木々の隙間からは、真っ青な空が垣間見える。

 

ここまで来ると、早く見晴らしが開けてほしくなってくる。

 

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山頂が近づいてくると、背の高い木々が少なくなり、笹の占める割合が増えてきた。

 

正規の道は、相変わらず笹に変わっても分かりづらい。

 

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たまに、登山道を示すテープが木に括り付けられている。

 

ここはピンク色だが、さっきは黄色のテープだったりと、統一感がない。

 

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山頂に近づくほど、見える景色が増えて行くのが歩いていて楽しい。

 

ここで一息ついて全方位見渡すしたいところだが、山頂に着いてからのお楽しみにするためにも、極力よそ見はせずに歩く。

 

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山頂手前からは、ほぼ一面の笹原となっている。

 

ススキと笹原をかき分けて、後少しの登りを踏ん張る。

 

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午後0時15分。

 

登山口の住吉神社から3 時間と少しかかって、四国百名山の寒峰山頂へ到着。

 

背の低い笹で覆われた頂上は、360度展望抜群。

 

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山頂からの展望。

 

まず目が行くのは、山頂から先に続く稜線。

 

ここから烏帽子岳や落禿を越えると、落合峠に続く。

 

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その右手奥には、頭一つ抜けた高さを誇る日本百名山の剣山や次郎笈

 

その手前の草原の山は、塔丸だろうか。

 

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そしてさらに右手には。三嶺や天狗塚。

 

ここ寒峰山頂よりも300m近く高い山々の存在感は、一際目立つ。

 

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四国の林道の多さは随一。

 

寒峰の裾野にも、尾根を横切るように白い道が通っているのが見える。

 

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登ってきた道を振り返ってみる。

 

この後ろには、高知県の山々が広がっているらしい。

 

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遠く石鎚山脈の山々まで望むことができるような快晴の日和。

 

四国の中心から、四方を見渡せているような感覚になる。

 

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ちなみに、寒峰の山頂はそこまで広くはない。

 

どちらかというと、道の途中に山頂があるようなイメージ。

 

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12月にして、まだ山頂には雪はない。

 

穏やかな天気ではあるが、たまに吹き抜ける風には、冬の寒さを感じるくらい。

 

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時期選びを間違えたのか、四国百名山にして山頂には誰も来る気配がない。

 

土曜日なのに。

 

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先述のとおり、帰りは往復ではなく時計回りの周回コースを選択。

 

落合峠まで続く稜線を少しだけ進み、分岐を南側の尾根へ逸れる。

 

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稜線は細めではあるが、足の置き場も十分にあり、特に危なそうな道ではない。

 

ただ景色も最高なので、気を取られないようには注意は必要。

 

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ここが落合峠との分岐。この道を逸れる。

 

何気なく撮った写真だが、我ながらいい感じの写真になっていてお気に入りの一枚。

 

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東尾根コースも、相変わらずトラバースが多い。

 

稜線付近は笹原の斜面に細い道が伸びている。

 

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右へ横切ったかと思えば、切り返して左向きに変わったり。

 

高度を落として行くほど、少しずつ笹の存在感は薄まってくる。

 

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笹が終わると、杉林地帯に帰還。

 

相変わらず、道の起伏が分かりづらい。

 

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林業作業用モノレールらしき設備の横を通る。

 

これはまだ現役なんだろうか。

 

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落ち葉も大量に落ちている。これが滑る滑る。

 

四国百名山とはいえど、道は本当に不明瞭なところが多い。

 

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これはどの季節でも同じなのか、はたまた大量の落ち葉が道迷いのリスクを跳ね上げているのか。

 

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尾根をそのまま麓まで下りていきそうになるが、地図上の正規ルートでは、途中から尾根を外れてトラバース道に逸れる。

 

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見渡す限り、道に見える明確な目印はなく、GPSを片手に彷徨い歩く。

 

少し道がおかしい事に気がつく。

 

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ピンクテープを頼りに少し進むも、どうも地面の不整備度合いが高すぎる気がする。

 

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倒木にもピンクテープが巻き付けられている事でやっと確信に変わった。

 

どうやらこれは林業用のテープではないか。

 

林業用に黄色いテープはよく見るが、ピンク色のテープは初見だった。

 

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今改めて写真を見ると、倒木の多さにもっと早く違和感を持てよという話。

 

ただ、当時はそれよりも登山道と同じピンクテープを使うなよ、と先に思ってしまった。

 

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目に見えて危険な道ではないけれども、細かい罠の数々に少し調子が狂う。

 

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残置された倒木を乗り越えて、恐らく正規の登山道と思われる場所まで復帰。

 

落ち葉を踏みしめて、スルスルと下っていく。

 

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冷や汗をかいたのがこの区間

 

落ち葉が敷き詰められたトラバース道が圧倒的に怖い。

 

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斜度はそれほどでもないが、特にこのコースは斜面への切れ込みが弱く不安定。

 

落ち葉で隠された腐葉土のように柔らかい斜面に足を置くと、ずるずると谷へ落ちていく。

 

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止まって場所を確認すると、山と高原地図と地図アプリで指す登山ルートが違う。

 

ちらの地図を信用すれば良いのか。

 

そもそも本当にこの道は正規の道なのか。

 

もはや一旦引き返した方が良いのではないか。

 

無音の登山道で焦る。

 

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アルプスの岩場なんかよりも、ここの方がまずい状況に陥るイメージが湧いてくる。

 

そういえば、朝から今まで誰ともすれ違っていない。

 

果たしてこの道を一週間に何人が通るかも分からない。

 

有名な山よりも、こういう山にこそ事故が起こりやすいことは容易に理解できた。

 

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結局、30分ほど格闘した後、少し谷側に下りて道を巻き、先の道へ復帰することが出来た。

 

写真で見るとなんてことない道ではあるが、この1年間で一番危険を感じたのは間違いなくここだった。

 

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以降は安定した足場になっているの、歩行でペースも持ち直す。

 

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最終盤に設置されている木の橋。

 

この状態で放置はまずいのではなかろうか。

 

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登山道の左下に、林道が見えてきた。

 

ほっと胸をなで下ろす。

 

東尾根コースの終わりも近い。

 

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午後2時。

 

白色で遠目でも目立つ林道に、無事に下り立った。

 

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あとはこの林道を道なりに30分ほど歩くと、住吉神社の登山口に戻り着くはず。

 

こんな立派な道の近くにも関わらず、数十分前には冷や汗を書いていたと思うと、凡人の無力さを再認識させられる。

 

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林道からは、寒峰がはっきりと見える。

 

数時間前、山頂から見えていた白い道は、この場所のことだったのかと合点がいった。

 

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林道を降りてくると、途中で分岐が現れる。

 

左に行くと住吉神社、右に行くと途中で横切った林道登山道入口に辿り着く。

 

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午後2時30分。

 

登山口の住吉神社へ帰着。

 

道迷いがなければ、5時間を切っていたはず。

 

総合計で、1時間弱は軽く時間を無駄にしてしまったと思う。

 

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晴天下の休日、結局最後まで誰一人出会うことはなかった。

 

登山道の感想としては、最後までルートを探り探り歩く下山路だった。

 

もはやあのまま、尾根沿いを無理矢理下りてきた方が安全だったのではないだろうか。

 

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今回の山登りで、落ち葉の鬱陶しさを知った。

 

なんて事ない山だからこそ、なぜか不気味さが増大する。

 

もし次訪れる際は、苦手意識がこびりついた落葉の季節は避けたいと思った。