散切り頭を叩いてみれば

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山と旅行の見聞録

散切り頭を叩いてみれば

モンゴルを抜けてロシアのイルクーツクへ シベリア鉄道で国境を越える

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ずっと昔から、いつかシベリア鉄道に乗りたいと思っていた。

 シベリア鉄道に乗って、物思いに耽る。海外旅行の中でも特にやってみたかったことの一つだった。

ただ、この鉄道は世界一長い。東の端のウラジオストクから西の終点のモスクワまでは丸7泊8日かかるらしく、自分にはとても障壁が高かった。

平日は仕事もあるし、それはさすがに不可能。そんな休みが取れる日をを待っていては、乗れるのが何十年後になるか分からない。

 となれば、現実的な手段は一定区間の乗車だ。

できれば1泊2日が良い。

あまり長すぎても退屈するし、かといって半日程度の乗車では醍醐味がわからない気がする。

別にモスクワに目的があるわけでもなく、正直なところただシベリア鉄道に乗って、寂しげな景色を眺めたいだけだった。

 

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区間

調べたところ、1泊2日で程度の丁度良い乗車区間はそれほど多くないようだった。

一番メジャーな区間は恐らく日本から近場の極東のウラジオストクからハバロフスク区間で、これが大体11時間らしい。ただし、ほぼ夜間の移動になるため、車窓を眺めるには少し物足りない。

ハバロフスクを過ぎると、次の大きな都市はイルクーツク。ただ、ウラジオストクからイルクーツクまでいくともなれば、所要時間は4日近くかかる。それは長すぎて休暇もとれそうになく、何よりさすがに退屈しそうである。

そんな中、ロシア国内から視野を広げてみると、いわば支線となるモンゴルのウランバートルからイルクーツクを目指す区間を発見した。

これはウランバートルを昼に出発し、イルクーツクへは翌日の昼に到着。約24時間の乗車だった。

実際に乗ってみると、車窓から夕暮れ、夜景、夜明けをゆったり眺めることができ、非常に充実した思い出になった。

 

 

行程

モンゴルからロシア入国まで(ウランバートル駅 − スフバートル駅)

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シベリア鉄道への乗車のため、まずはウランバートル駅へ。

スフバートル広場などの街の中心部から徒歩20分と歩けない距離ではなかったので、徒歩で到着。

駅舎の中にコンビニや売店のようなものは見当たらなかった。

シベリア鉄道の車内販売は高額で、かつ種類も本当に少ない。 万一のことを考え、あらかじめ町中のスーパーで先に食料をまとめて買いだめておいて助かった。

 

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駅舎はいたって質素。

一国の首都とは思えないほど、内部はこじんまりとしていた。

そして待合室を抜けると、そこはホーム。

 

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ホームはそれほど混雑した様子もなく、非常に落ち着いている。

恐らく長距離列車しか発着しないようで、列車の往来もほとんど見られない。

 

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程なくして、乗車予定の列車が到着。

1時間程前から作業員が車両に集まってきて、整備作業を行っている様子。

 

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しばらくすると乗務員が各号車の前に立ち始め、ホームに人も徐々に集まって来た。

乗車券を提示すると、記載内容を確認されたのち車両へ入る許可が下りた。

 

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そして無事、乗車完了。

出発は15時22分。ほぼ定刻通りに発車した。

路線の乗車割合は半分くらい。 自分の居室も2段ベッド×2の4人収容だったが、乗車の間は終始2席空いていた。

シベリア鉄道と聞くと、どうも車内での乗客同士の交流を想像してしまうが、正直自分は、主に物思いに耽り、たまにだれかと話すくらいの過ごし方がしたかった。

実際には思っている以上に他の乗客も個人の空間を満喫しており、特に過度なコミュニケーションが発生するわけでもなかった。

モンゴルから仕事に行く人、中国人の家族連 れ、ロシア風の一人客...観光客らしい人はほぼおらず、たまに他の乗客と会話しつつ、殆どの時間は外を眺めながら過ごした。

 

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車窓から見える風景。

ウランバートル駅を出発後、最初のうちはウランバートル市内を走行するため、民家や工場が見られるが、

 

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すぐにモンゴルのイメージらしい平原が広がる地帯と景色は変化する。

 

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やっぱり空が広い。4月末のモンゴルは雪解け直後のため、あたり一面緑の草原とはいかなかったが、広大な茶色い平原もそれはそれで格好いい。

荒野を駆け抜けるシベリア鉄道、これに乗ってみたかった。

 

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車窓から景色を見ながら、本を読む。

明るい時間からシベリア鉄道に乗車すると寝る以外にも色々できる。

 

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社内の給湯器で淹れたコーヒーを飲んでいるうちに、太陽が沈む。

 

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1日が終わっていくのをこんなにもゆっくり眺めたのは、何年振りだろうか。

そして、夜がやって来た。

 

ロシア入国から目的地へ(スフバートル駅 - ナウシキ駅 - )

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国境越えは深夜だった。

外は真っ暗でよく見えなかったが、目を凝らしてみると、列車は何もない平原で停車していた。

Googleマップを確認すると、どうやらここはモンゴル側のロシアとの国境、スフバートルという街の郊外のようである。

まずはモンゴル軍人が居室に入って来て荷物検査を行い、モンゴル側の出国審査が終了。

ここまではスムーズだったが、そこから1時間近く何の音沙汰もなかった。恐らく他の乗客の検査に時間がかかるのだろう。

 

そして、検査が終わるとゆっくり電車が動き出し、すぐにまた停車。

続いてはロシア側のモンゴルとの国境、ナウシキ駅付近のようだ。

そこで数十分待ったのち、ロシア軍人が居室に入って来て椅子をはね上げ鞄の中身をひっくり返しての荷物検査。

その後入国審査官も居室に入って来て審査が行われ、深夜のうちに無事ロシアへ入国。

入国スタンプは飛行機ではなく、鉄道のマーク。

深夜の緊張感から解放され、やっと深い眠りにつくことができた。

 

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朝目覚めると、この日も快晴。

鉄道は昨日と変わらず黙々と大自然を走り続けていた。

 

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ただ、見える景色はモンゴルとは少し変わってきており、針葉樹やロシアらしい民家がちらほらと見られるようになった。

 

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そして、気づけばあたりは真っ白に。

これは、この区間の終盤に差し掛かると出現するバイカル湖

4月後半ではまだ雪が残っていた。

そこからイルクーツクまでは、この湖岸沿いを走り抜けることとなる。

 

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バイカル湖を夜のうちに通過する路線も一部あるらしい。

その点ウランバートル経由では、ずっと湖を眺めていられるのも良いところか。

 

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これぞシベリア鉄道、といった景色を見ているだけでここまで来た甲斐があったと思わせてくれる。

 

 

到着 ( - イルクーツク駅)

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そして、ウランバートル駅を出発した翌日14時37分、イルクーツク駅に到着。

相変わらず青空が広がっている。

 

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イルクーツクの駅舎はロシアの地に降り立ったと実感できるような造り。

振り返れば乗車していた約24時間、乗車時間が長すぎて飽きることもなく、かといって忙しないわけでもなく、景色にも変化があって退屈しない。 丁度良い楽しみ方ができる区間だった。

一つ欠点があるとすれば、国境を深夜に越えるため、必ずその時間は起きていな ければならないことくらい。

結局この地でもう2泊し、ウランバートルを出発してから3泊4日で日本に帰国した。